『「無人タクシー」に現実味』から怖い話のテクノロジーを考えてみる

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「無人タクシー」に現実味のニュースから

ヤフーニュースに出てきた「「無人タクシー」に現実味=完全自動運転車、開発が加速―米(時事通信)」のニュースがあります。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160829-00000016-jij-n_ame

運転は楽しい反面怖い所もありますので、人間の補助として最初はスタートしてくれるとすごく助かります。
遅かれ早かれ全自動化は実施されるでしょう。後は時間だけの問題です。
法律なんて後からついてくるものですし、仕組みは徐々に出来上がると思います。

どこにビジネスチャンスがあるかをきちんと考えて、準備する事の方が大切です。
私は「ロボット保険.com」のドメインを保持しているので、この手のビジネスの準備しないといけないなとは思っている所です。

怪談について

私は怖い話を聞くのが好きで、youtubeの怪談の朗読などを聞いています。
人を笑わせるのも技術ですが、怖がらせるのも技術です。伊集院光さんははっきりと「作り話」と明言していて、それはとても参考になります。

話の構成、聞かせ所、意外性、可能性。そういうものは提案のプレゼンにも通じるところがあります。
そんなつもりで聞かれる怪談もどうかと思いますが、私は比較的あの手の事を信じないタイプということもあり、軽く聞けます。シックなTEDみたいなものです。

そんな怪談話。よく出現するお決まりのアイテム(シチュエーション)があります。
順不同で適当に思いつくまま数個挙げると多くの方は簡単に10個位は出てくるのではないでしょうか。

  1. 廃墟
  2. 病院(廃墟とセットになる場合も多い)
  3. ホテル/旅館(廃墟とセットになる場合も多い)
  4. トンネル
  5. トイレ
  6. 自動車/タクシー
  7. 写真
  8. ビデオテープ
  9. 電話/携帯電話
  10. 鏡(お風呂場とかがベター)

これを盛り込んだ怪談話を作ると、こんな感じになります。

廃墟になった病院に男女4人で肝試しに行こうと自動車を走らせる。中に入るとジメジメと纏わりつくような空気が漂っている。
俺たちはそこでビデオカメラ片手に探索をした。手術室、トイレ、霊安室。
肝試しの証拠として写真も数枚撮ったが、特に何も写っていないように見える。

何事もなく終わり、来た道を帰る途中、トンネルの中を走っているとA子が急に震えだした。「何か見えた」らしい。
「まさか」と思いつつも、俺たちは大急ぎで家に帰った。

後日ビデオを見返してもおかしい所は無い。現像した写真もそうだ。「なーんだ」とみんな安心していた。
その日の夜、お風呂に入っていると違和感を感じる。何か視線を感じると言った方がいい。恐る恐る目を開けると、鏡の端に人影が見えた。振り向いても誰もいない。
気のせいかと思い、お風呂から上がってビールを開けると同時に携帯が鳴る。非通知。出ると無言電話。切るとまたすぐ着信が。それが延々と続く。
いい加減にしろと音を切ってその日は寝た。

翌日数百件の着信にゾッとする。その中に一緒に肝試しに行った男友達からの着信もあった。
急いで折り返すと「おい、昨日の写真、見てみろよ…」。電話越しの声が明らかに震えている。
再度見直したら背筋が冷たくなった。昨日は確かに写っていなかったはず…。今日ははっきりと女の影が映っていた。

みたいな感じがオーソドックスなやつでしょう。よく聞く話に感じたのではないでしょうか。
誰でも作れるので、適当に作ってみたらいいと思います。

何が怖いかどうかはここでは全く関係ありません。
注目すべきはテクノロジーと怪談の関連性です。

怪談とテクノロジー

例えば番長皿屋敷。

非常に有名なお話ですが、あのころの幽霊は携帯電話は当然使えません。
写真に写り込むこともできません。街灯もありませんので、非常に出るのに苦労したと思います。

対して、最近の幽霊は携帯電話をバンバン使いこなします。
主に電話機能がメインですが、メールも使います。

このことから、現世のテクノロジーの進歩に併せて幽霊も進化していないといけない事が分かります。
「デジタルはちょっと…」「近頃のスマホは機能が多くて分からない」と言っていては幽霊も怖がらせられないということです。
あの世界も厳しいことが分かります。

最近の都市伝説系ですと、Siriも怖い話には出てきました。
何気なく聞いているかもしれませんが、10年前にはあり得ません。iPhoneがありませんから。

ただ、最近の幽霊でもSNSの話はまだ少ないと思います。
facebookやLINE、Instagramに幽霊が出てくるという話は少ないと思います。
即ち、多くの幽霊にとって携帯は使えてもSNSは使いこなせてないということになります。まぁ幽霊として活躍している年代だとまだ馴染みがないですかね。
大体1周なり2周回ってから使い出すイメージですので、そろそろ幽霊たちもLINE辺りはガンガン使い出す気がします。

怖さとデジタルはどうしても反比例します。怖い話はなんだかんだ言ってメインはアナログの世界です。

残るもの、変わるもの

例えば心霊写真。

最近はデジタルでも心霊写真はありますが、やはり現像するという所に1つの怖さがありました。
『写真屋さんに出来上がった受け取りに行くと「あの写真は見ない方が…」』というような話もありますが、今のご時世、残念ながらそのやり取りは少ないでしょう。なにせ自分でできます。

また、私のEOS Kissでさえ1秒間に6回も連写できる反面、その1回に思いを込めてというような写真は少なくなってきましたと思います。
「あ、変な風になっちゃった」で消せば終了です。幽霊も中途半端な覚悟で心霊写真に写っては消されてしまいます。
私はパリで4000枚写真を撮りましたが、その中に1枚もし幽霊が入っていたとしても、はっきり言って気付くのは無理です。

だから命懸けでアピールしないといけません。若手芸人じゃないですが、分かりにくいと今は無理です。

インスタグラムにアップされたものなら、ドンドン加工もされちゃいますので、ますます分かりにくくなります。
「昔は顔っぽければ驚いてくれたのに…」と嘆いてそうですが、今はある程度はっきりしないといけなくなりました。
これもデジタル化が進んだから起きた事です。あの世でも「心霊写真対策会議」をしていると思います。

「カメラの液晶に写る幽霊」「手元にある現像された写真に写る幽霊」では後者の方が多分怖いです。
物として存在することで、簡単に削除できないことが理由なんだろうなと思います。

「写真を神社で供養してもらった」という類の怪談は聞きますが、「デジカメで撮った写真に幽霊が写り込んでいたので、SDカードを供養した」という話は今の所聞いたことがありません。

昔は24枚撮りの使い捨てカメラとかだと、撮って終わりではありません。
使い捨てカメラは当然の様に「撮る」→「全て現像」の流れが出来ていましたが、今は違います。多くは現像されないはずです。

今後心霊写真も大きく変わっていくかもしれませんね。

 

そしてテクノロジーと共に怖い話の表舞台から消えていく物もあります。
「呪いのビデオ」で一躍脚光を浴びた「ビデオテープ」です。

今やVHSデッキは非常に少なくなりましたので、あれに呪いを込めても今では無駄になります。どんどん減っていきますから。
せめてブルーレイディスクに入りこまないとテレビから出てこれません。もしくはHDDに直接入り込むかです。

これは一大事です。間違ってビデオテープに入ってしまったら二度と出てこれない訳です。
今時の霊ならいいでしょうが、少し前のテクノロジーしか知らない霊だと間違って入ってしまいそうですね。
「あー、ビデオテープに入っちゃったよ」と上司が頭を抱えるなんて事もありそうです。

今でもyoutubeで検索すると「呪いのビデオ」が圧倒的です。

「呪いのブルーレイディスク」とか「呪いの外付けHDD」とかは検索してもあまり出てきません。恐らく怖くないです。

 

この差は一体?と考える余地は大いにあります。
ビデオテープの持っているアナログ感や壊れやすさ、テープを使う事による映像の劣化はかなり幽霊側にプラスになっていました。
ついでに言うと、ビデオテープの消しにくさもあったでしょう。
上書きすれば消せますが、[delete]で消すのとは違う趣があったから良かったのでしょう。

 

自動運転でタクシーの怖い話はどう変わるのか。

自動運転になるとタクシーでの怖い話も変わってくるでしょう。
運転手がいないので、まさか運転手が幽霊だったというのはあり得ません。
「実は運転手さんが幽霊だったんですよー」と言われても「え、運転手っているの?そもそもそこからおかしい」となります。それでは幽霊も不本意です。

今までは生身の運転手に対してお客として幽霊が乗ってきました。
「運転手がバックミラー越しに後ろを見たらいなくなっていて、シートが濡れていた」とかベタな話がありますが、それは成り立ちます。

ただ、将来はこうはいきません。

生身の人間が車の中にお客さんしかいませんので、幽霊もお客として乗るしかありません。
つまり、運転手はAIでお客が人間1人で幽霊1人以上のパターンになるでしょう。

今までは待っていたら運転手さんが気付いて乗せてくれた(自分の前に止まってくれた)のに、これからは自ら乗り込まないといけない。これは大きな違いです。
また、運転手さんとお客の関係であれば、目的地を話せばそこに向かってくれました。

今後は生身の人間に対して目的地を言わせるか、もしくはAIを制御して目的地を変えさせるかしないといけません。
つまり、今後タクシー型幽霊に求められるスキル要件が大きく変わります。

今まで

  • 道路脇に立っている
  • 目的地を話す

これから

  • 乗り込む車を決める
  • 人間と一緒に乗り込む
  • 目的地を操作する(人間を使うかAIを制御するかは任意)

今までは「話せればOK。その場で立ってるだけの簡単なお仕事です。」という感じの求人だったのに、ハードルが上がります。
「自ら進んで目的地へ行ける方。人間に憑依できる人優遇。」みたいな事になるでしょう。さすがにAI制御は元エンジニアの霊でもないと厳しいかと。

事務職から営業職に変わる感じです。多くの幽霊は簡単に受け入れられるでしょうか?ここまで違うとスキルアンマッチは必ず出ます。
農耕民族から狩猟民族にならないといけないので、特に日本の幽霊はもしかしたら向かないかもしれません。

幽霊達も愚痴をこぼしているでしょう。このニュースのコメント欄があれば覗いてみたいです。
「ヤバい。私スキル足らない…。」「この場合はどこで消えるのがいいの?」「憑依ってwww。簡単に言うな www」とか書かれていると思うとテクノロジーの進化は色々なものを変えていきます。

そしてテクノロジーは「恐怖」の枠組みを大きく変えてしまいます。

例えば自動運転で考えます。

今なら「タクシーに運転手が乗っていないにも関わらず車が動いていて、後部座席に女の人が乗っていた」という状況を見たら怖すぎます。

ところが、将来自動運転ができたと仮定して同じものを見ると全然怖くありません。
むしろ「人が誰も乗ってないのにタクシーが動いている」のが当然になります。

そうなると怪談としては成り立ちません。
恐らく将来はタクシーと幽霊の話は大きく形を変えざるを得なくなるでしょう。

もう1つの問題として、運転手が不在になるという点です。これは第3者としての登場人物がいなくなることを意味します。
幽霊が消えて水が残れば、自分と運転手という利害の一致しない人が同じ状況を見たということで話に締まりがでます。

が、自分と幽霊だけが車にいて、幽霊が勝手に消えて水が残ったので、それを誰かに話しました、というのでは「自分が勝手に思い込んでいるだけなんじゃない?」としか感じないでしょう。

今後タクシー型幽霊がやることと言えば

  • 目的地を変える
  • どんどんスピードを上げてしまう
  • 動かなくしてしまう

とかでしょうかね。

ただ、仮に幽霊がやったとしても多くの人が「プログラムのバグ?」というのが最初に思い浮かぶであろう点が切ない所です。
これは「ちょっと触れている」所に恐怖の入り込む余地があるのでしょう。

例えば自転車で自分の意思に関係なくフラフラとしていたら「霊の仕業かも」と感じてしまう人もいるでしょうが、飛行機がフラフラと上下に揺れても「霊の仕業かも」とは思わないはずです。
同様に自分が運転席に乗り込んでエンジンを掛けたのに掛からないのと、自動運転で乗ったのにエンジンが掛からないのでは感じ方は違うはずです。
自分の支配下から大きく外れているが故に、恐怖より先に理性が出てくるはずです。

今まではちょっと出てきて適当に消えてれば驚いてくれたのに、将来的にはこれだけでは生き残れません。

きちんと見える形でタクシーに乗り、「私が自動運転の車をバグらせて操作しているだぞ」ということを分かるようにしないと同乗者に気付いてもらえません。
そうしないと「自動運転の制御がおかしい」と機械側に全責任を押し付けてしまうでしょう。
生きている側は現実問題として万一の場合は補償とかもありますので、仕方ない所です。
「幽霊が悪さした」では何かと不利でしょうし。

つまり、タクシー型幽霊には同乗者へ理解させるためのプレゼン能力も求められます。
「どうやって人間に対して我々の仕業と理解させるか」というストーリーを作らないと曖昧な主張になります。

ますます営業のスキルが…。
今までぬるま湯に浸かっていた幽霊は大丈夫でしょうか。

この手の事が合わない幽霊はリストラされてしまうか、もしくは職を変えるしかないでしょう。
もう今まで通りにタクシーは乗れません。乗っても気付いてもらえません。

「私はここの霊だから…」と過去に囚われていたら、主張は届かなくなります。
テクノロジーの進化は時として残酷な現実も突きつけます。

今後の幽霊の活躍について

今後IoTの発展などにより多くのものがデジタル化されるでしょう。
それこそ将来あらゆる家電が自動で何でもするようになったら、イレギュラーな現象は「バグだからパッチが必要だね」という事で終わるようになってしまうかもしれません。

幽霊で怪談を作れる幅が狭まるのか、それともそこから新しい幽霊が出来上がるのかは考える余地はあります。
人間も自動化で職を失う可能性が示唆されている(というかほぼ確実に失うでしょう)が、幽霊の活躍の場も減っていく感じがしています。

デジタル化、無人化の流れは好ましいと思う反面、アナログ的なものの価値もあります。
そして、今後どのように変わっていくのがいいのかを生きている人間がしっかり考えるべきなんでしょうね。


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