「日本のイノベーションのジレンマ」を読んで

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「イノベーションのジレンマ」という有名な本があるが、それを主に日本企業に当てはめて考えるきっかけとなる本。

そもそもイノベーションとは?という定義もかなり曖昧。突発的なことをすればイノベーションか?というものでもない。

例えば「キャットフードをベースにしたピザ」とか、明らかに誰もやってないことだろうけど、それはイノベーションではない。誰にも受け入れられないものはイノベーションとは言わない。

本書に書かれているが、現代のイノベーションの定義として

機会を新しいアイディアへと転換し、さらにそれらが広く用いられるようにするプロセスである

と書かれている。イギリスのイノベーション研究をしているパビットさんの定義らしい。

キャットフードピザは新しいアイディアは満たしているものの、広く用いられるはずがないので、これはイノベーションとは呼ばない。

 

本書にも書かれているが、技術的に超えるのは然程難しい事ではないらしい。

アメリカ大企業のプロジェクトの成功確率による研究によれば、あるプロジェクトの「技術的な成功確率」が約80パーセントであったのに対して、その後の「商業的な成功確率」は約20パーセントだったそうだ。

つまり、新しいものを考え、技術的にそれを作ることまではできる。売れるかどうかは別問題で、ここが勝負の肝という訳だ。

確かに、まだ誰もやった事が無いことをやるというのは然程難しい事ではない。「まぁ普通やんないよね」ということをやればいいだけだから。それを商業的にまで昇華させるとなると、これは一工夫必要だ。Youtuberの方で、「〇〇やってみた」とかはこれを商売にしている例だろうが、ネタが持つかどうか?が今度は勝負になる。

イノベーションの分類

本書では3つに分類されている。

  1. プロダクト・イノベーション
  2. プロセス・イノベーション
  3. メンタルモデル・イノベーション

1のプロダクト・イノベーションは、スマートフォンとか、スーパーファミコンからのPlayStationとか。製品やサービスによるもの。

2のプロセス・イノベーションは、トヨタカイゼン方式など、社内のやり方を変え、コスト競争力を増して安く提供するなど、やり方を変えるもの。これは日本企業は得意にしていたし、この信仰は強いと思う。

3のメンタルモデル・イノベーションは、社会の認識を変えるやり方。ここが難しいが、ここが社会に浸透するための肝だろう。例えば写真を撮るという事だって、以前は自分の記録を残したり、旅の思い出を残すのが目的だったと思うが、最近はInstagramに代表されるように、SNSに投稿することが目的になっている人もいるはず。そういう人にとっては、「写真を撮る」という行為は同じで、それこそ携帯で撮るという事も変わってないにも関わらず、目的が違うし、それで得られる「いいね!」に価値を見出しているからこそ流行っているのだろう。ここを変えるのが技術的には簡単だと思うけど、かなり難しい。

イノベーションを享受するのは主に人間

これが大前提だと思う。

例えば、本書でも以下の例として書かれている。

今持っている車が古くなったので、新しい車を買うことにしたと思ってください。候補となったのは次の二台です。自動車Aは、最高時速が三百キロで価格は三百万円。自動車Bは最高時速が四百キロで価格は四百万円。あなたなら、AとB、どちらの車を選びますか?

これも極端な例だけど、Aという人が多いと思う。この例だとAも大概だけど…。

どちらにしろ、日本の高速道路では120キロ以上(一応100キロだけど、下り坂とか場合によってはこれ位は出てしまうこともあるので…。)は恐らく要らないのが普通であり、いわゆる「オーバースペック」という状況。人間の反射神経を超えるような自動車は、いかに優れたものであっても要らない。「性能がいいから市場は選んでくれるはず」というものでもない典型。

テレビから見る破壊的イノベーション

言うまでもなくテレビについて、日本企業が苦しんでいる。

色々書かれているが、とにかく性能は人間の認識できるレベルを遥かに超えている。

例えばコントラスト比(一番明るい所と暗い所の差)については、人間が認識できるのは精々800:1。100:1位という論文もあるし、どちらにして3桁位だろう。これが現在の液晶テレビで表現されるのはなんと7,000,000:1とのこと。これはスゴイことはスゴイけど、誰も分からない。

つまり、画素数やコントラスト比、反応速度どれをとっても人間である以上、誰も分からないレベルに到達しており、これ以上頑張って性能を上げても仕方ないという所にいる。これ以上素晴らしい性能のテレビを作って未来があるか?と問われると非常に怪しい。

それに加えて「若者のテレビ離れ」というものもある。

スマートフォンの普及やインターネットの普及もあり、テレビそのものを見ている時間が減っているというデータもあるのに、その上性能なんて誰も気にしないだろう。

4Kテレビから8Kテレビなんて無駄だと思うけど、それに突き進んでいるのがどうしたもんだろう。

誰も望まない技術革新なんて意味がないのに、4Kテレビとか言ってると「???」と思う。

SHARP再建を勝手に考える

読んでいて、果たしてSHARPはどうやって再建したらいいのか?を自分なりに勝手に考えてみる。

 

全然責任が無いので、無茶苦茶なことも考えられる。

テレビという「モノ」をいくら売っても今更無理だろうし、そもそもそんなに売れない。ほとんどの人がテレビを持っている。

撤退というのを考えるのが最も簡単だけど、それだと話が進まない。

テレビに求める事は、本書で書かれているが、だいたい以下のもの。

  1. 暇つぶし・賑やかし
  2. 情報収集
  3. 感動を得る

その中でイノベーションを起こして、もう一度SHARPを輝かせるには?どうしたらいいだろう。

持続的イノベーション

これ以上性能アップしても意味なし。以上

ローエンド型破壊

例えば安いテレビを作って…というのがこれだけど、ほとんどの人がテレビを持っているのに、これ以上安くして動くか?というとかなり疑問。

例えば100円にしたとしても、わざわざ今のテレビを捨ててまで入れ替えるか?というとこれも疑問。多分無理。

新市場型破壊

今まで捨ててきた「無消費」の顧客をターゲットとしてお客さんを動かす。

これが一番試す価値がありそうだ。ただ、テレビに無関心という人はいるだろうが、ここまで普及しているのに、無消費の人がどれだけいるのか?というとこれも少ない。

以上、どうあがいても無理、というのでは意味がない。色々テレビがある中、どうしたら「わざわざSHARPのテレビを買う」のか?を考えないと次に繋がらない。ダメな理由を探すのはこの際簡単だし、やっても何か生まれるとは思わない。

 

案①:自らがメディアになり、SHARPのテレビ専用番組を作る

これは私が考えてたこと。SHARPのテレビしかこの番組は見られないとなれば、買う価値は出てくる。

テレビなんぞ一家に一台以上ある訳で、この値段なら追加で1つ買うという人が出てくるだろう。

例えば超マイナースポーツの独占テレビ放映権を取得する。配信はインターネットなら、電波関係ないだろう。理想は電波なので、どうにかして電波が欲しいが、壁も厚い。

とりあえずネットが繋がる環境で、SHARPのテレビに繋げば、専用チャンネルが見える。

例えば私は乗馬をやっているが、全日本ジュニアとか全日本障害とかやる専用のテレビとかなら、買う人は出てくるのではないか?非常に小さいパイだろうけど、コンテンツを増やすことで対応できるメリットもある。広く浅くコンテンツを用意できれば、新規需要獲得にならないか?

案②:SHARPのテレビを使っている人専用のクーポンなどを発行

これもソフトサービス拡充案。破壊的ではないな。書いて思った。

どちらにしても映すコンテンツは変えられないし、内容も他のテレビと一緒。だから価格勝負になる。

例えばSHARPのテレビを使っている人専用に、この割引券がテレビの内容に応じて出てくるとか、ドラマのスポンサーから何か提供されるとか、「ソニーか東芝かSHARPか」とお客さんの評価が同率で並んだ時に一歩出るための施策として、「得できる」を売りにするというのはどうか。

営業力は必要だけど、「性能は一緒ならこれを選ぶか」というもの。

案③:NHKを映さないテレビ

これは至る所で言われているが、電波を受け取ってないのなら、テレビを持ってないのと一緒。それでNHKの集金を抑えようというもの。

「どうせ暇つぶししかテレビ見ないでしょうし、情報収集はネットでしょ。なら運用費を安くしましょう」の提案。

 

 

こういうことを考えるきっかけになる。

ニュースを見て「大変だ」「経営者が悪い」とか言うのは易し。多分普通の感覚ならどうあがいても今の状況に陥ったと思う。これをどう考えるか?をすることが、次に繋がると思って。


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