「ビッグデータ・ベースボール」を読んで

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“常識”という難敵に“数学”という武器で挑んだ男たちの物語。
「ほかのチームから見向きもされなかったベテラン選手、多額の契約金で入団したドラフト指名選手、古い教えを受けたコーチ、数学の天才から成る寄せ集めのチームが、個々の能力を合計したよりも大きな力を発揮して、ここまで到達したのだ。彼らは新しい意見、新しい考え方、共同作業を受け入れなければならなかった。それが2013年の彼らの物語であり、彼らの成果だった。」(本文より)

ビッグデータ・ベースボール 20年連続負け越し球団ピッツバーグ・パイレーツを甦らせた数学の魔法
ビッグデータ・ベースボール 20年連続負け越し球団ピッツバーグ・パイレーツを甦らせた数学の魔法 トラヴィス・ソーチック

KADOKAWA/角川書店 2016-03-16
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セイバーメトリクス

今でこそOPS(オプス、オーピーエス)やQS(クオリティ・スタート)など色々な指標が野球を見ていると語られるようになりました。

アメリカだと特に色々と測定されていて、打球の角度から初速、軌道。
今やバイオハーネス(ユニフォームの下に着る圧力シャツ)を着る事により、心拍数やカロリー消費量を測定することができ、試合中のプレイとアドレナリンと相関関係まで見る事が出来るようになっているらしい。

マイナーリーグの球場にも測定器をつけ、カーブの軌道からキャッチング(ピッチフレーミング技術)まで測定しているそうです。

野球は多くの時間止まっており、ボールが必ずピッチャーが投げる所から始まるため、比較的測定しやすいとは思います。
私も野球をやっていましたが、簡単なスコアブックでも打球の傾向ははっきりわかる時がありますし、どういうボールでストライクを取りに来るとかは感覚だけでない事実が出ていたように思えます。

メジャーだと162試合ですので、レギュラークラスの人はそれこそありとあらゆる打球を解析されてしまうことでしょうね。

 

監督やコーチの立場として

この本で最も工夫というか大事にしていたのは「チーム全員が『データ活用をする』という方針をどのように共有するか」という所だと思います。
実際に分析をするテクニカルな話ではなく、チーム作りなどを主眼に置いています。

GM、監督、コーチ、分析官、選手。

データは数字でなくてもメジャーの選手であれば相手選手の雰囲気は肌で感じているはずです。
それこそ打球の方向は大まかに把握しているでしょう。

そんなメジャーリーガー達に、メジャーリーグのグラウンドに立ったこともない分析官からの情報を基に指示をしなければなりません。

監督として大事なことは、データを活用するという覚悟を持つ事でしょうね。
それをチームに浸透させるため、パイレーツは分析官をクラブハウスまで同行させたそうです。
それ位チーム一体で推し進めないと、データ活用は進まないんだろうなと思います。

会社も同じだと思います。

今やビッグデータという言葉は溢れていて、当たり前のようにデータ解析について話されています。

データは実際に目に見えないだけに、頼るものとしては弱弱しく感じます。
それだけに、リーダーとなる人の意思が大切だなと思いました。

 

分析官の立場として

データを視覚化し、スポーツ選手にも分かりやすく工夫しているプロセスが印象的でした。

これも気を付けないといけません。

システム側からすると、色を付けてなんだかんだするよりも、数字の方がスムーズに入りますし、手間もかかりません。
しかし、それだとインパクトにも欠けますし、多くの人を説得するにはパワー不足です。

データを扱うとなると、どうしても数式やスプレッドシートの山に目が行ってしまい、伝わらないのでは本末転倒です。

データを扱う側として見栄を張らず、プレゼンテーションとして、きっちりとデータの価値を分かってもらうことができないと、次に進みません。

「ただの数字マニアになってはいけない」というのが教訓でしょう。

 

選手の立場として

自分も野球をやっていました。

もし、引っ張り専門だからと言っても大リーグで見られるような極端な守備シフトは受け入れるのは容易ではないと思います。

リーダーがしっかりしていようと、データがどれだけ如実に示してようと。
そこでボールを処理してきたという実績がありますし、スペースを空ける事によるデメリットを大きく感じてしまいます。

ましてや自分は現場に立っているという自負もありますし、グラウンドでの直感を信じてしまいがちです。
それがプレイヤーとしての矜持でしょう。

強いリーダーシップは確かに必要ですが、現場の人間に頭ごなしに「やれ!」では反発を招きます。
しぶしぶ現場が従うのときっちりと意思をもって従うのとでは効果も違うはずです。最後ボールを掴むのは自分ですし。

下手に出すぎる必要はないですが、改革をするには理解してもらうように努力するのが上の努めですし、プレイヤーはきちんと上の指示に筋が通っているのであれば、全力を尽くすべきでしょうね。

「チームの絆」とか「信頼」

「データ」というおよそ無機質なものとは対極にあるものですが、「データを使って思い込みを排除して違う戦い方をする」という事においては、重要なんだと感じました。
解析なんかよりよほど難しいですからね。


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