データをどのように使い、どのようなソリューションを提案すれば良いのかを書かれた本。
特に前半は非常にためになった。
データの活用は盛んに取り上げられ、分析手法やダッシュボード機能を備えたCRMもたくさん販売されている。
しかしどうもしっくりこない。
「データ集まります→分析できます→色々と分かります」 というものだと思うが、この色々がなんなのさ?という所が上手に表現できず、「ウチにはまだ不要かな~」となってしまう。
ここをどうするか?が売る方も買う方も肝心なところだろう。
本書ではこれを4つの事象(DIVA)によって分類する事を勧めている。
D:データ (Data)
世の中の「事象」から「生成・収集」によって「データ」が得られる
I:情報 (Infomation)
データに対して「解釈・分析」を行うと、そのデータが特定の人にどのような意味を持つかという「情報」が得られる。
V:価値 (Value)
情報に基づき「働きかけ」が行われると「振る舞いの変化」が引き起こされる。この振る舞いの変化こそが、見える化止まりを超えて必要とされる価値である。
A:効用 (Achievement)
振る舞いの変化を「効用」に結び付ける際には、一般的な事業上の課題を解決する必要がある。
特に「V」が重要だ。
データを集めて分析しても、実際の価値が無ければデータを分析する意味がないし、それに対して投資は行わない。
「こういうデータが集まるからこうやってリアルタイムに見ることができます」というCRMも多いが、リアルタイムに見えたから何の意味があるのか?は多分各社違うし、戦略によって異なる。それを価値に結び付け、売上など経営にインパクトを与える提案にするには、もう1歩踏み込まなければならない。
そこまで到達して提案したい。特に社長への提案には以下の方がいいとも書かれている。
「売上」→「価値」→「情報」→「データ」
経営者はまずは売上がどの位上がるか考える。
その上で、どのような価値を顧客に提供すれば実現できそうだ。その価値を提供するために必要な情報は〇〇だ。〇〇に必要なデータはA,B,Cだ。AとBは既に自社のシステムで保有しているので、取得すべきデータはCだ。Cを得るためにはこのIT基盤の整理が必要だ。
の流れ。それを提案すると、話の筋としては通る。
IoTなども流行っているし、ビッグデータ関連の本や文章はどこでも探せる。データを集める環境は整いつつある。
実例も様々出ている。アイデアの実例は本書に沢山書かれているが、A社で実現したことがB社で実現するか?は別問題だと思う。
アイデア勝負な所もあるので、パッケージでは実現できない部分だろうし、ここが企業の個性だ。
実例の中で1つ面白かったのは以下の取り組みだ。
彼らはクーポンを通行人にやたらと配ることをしない。店先に大きなディスプレーを備えたゲームを用意し、小さな子供が使えるようにする。そして、子供が夢中になってゲームに取り組んでいると「がんばったね!」というメッセージと共に「当たり」のクーポンが表示される。「当たり」が表示されたディスプレーの前でうれしそうにピースサインをする子供を撮影すれば、その写真をそのままクーポンとして使用することができる
ただのクーポンの配り方を変えるだけで、即ゴミ箱には入れにくくなる。なんせ子供の写真が写ってるのだ。
これは非常に面白い取り組みだと思った。自分で作ったものは簡単に捨てられないし、自分が労力を使って手に入れたものは過大評価しがちだ。そこを上手く突いている。IoTのセンサーを使ってリアルタイムに分析して制御して云々とかではない所でも、データを大量に分析せずとも顧客の行動を変えられる。考え方を変えるヒントになった。
データの活用を考える時、もう1度読み直そうと思う。