「会社のITはエンジニアに任せるな」を読んで

スポンサーリンク

会社のITはどうあるべきか?どうマネジメントすべきか?が書かれた良本だ。

手元に置き、考え方の癖を正していくのにとても役に立つ。

どうしてもITと経営と業務とを分けてしまう人もいる中、業務と経営とITは一体であり、分けるという選択肢は無いということを改めて考えていく必要がある。

これは第1章に書いてあることが非常にためになった。

多くの人は、ITを道具(ツール)だと思っています。

これは真実だろう。どうしても業務を自動化するためのツールとして捉えがちで、経営のスピード感や戦略的なデータ活用より、「業務を上手に回すこと」に重きを置いてしまう。

会社で使うITには「ツール型IT」と、それとは別に、会社にとって死活的に重要な「プラント型IT」がある

と筆者は述べています。

ツール型というは文字通りツール。メールや今ではスケジューラなんかもそれに当たるだろう。

「仕事が使うことで便利になる事」がこれ。これをいくら強化しても所詮は「便利になる」が「すごい便利になる」に変わるだけで、そのツールの威力がもの凄くない限り、競争力の源泉には成り得ない。

それに対し、プラント型ITと呼ぶものは、その会社の特有な競争力の源泉になる情報が流れ、仕事の進め方を決めているもの、というようなもの。イメージとして石油プラントを例に出している。

もちろんプラントは単なる道具ではありません。石油の精製プロセスに従って、多くの複雑な設備が完璧に組み合わさってできています。道具のようにどこからか買ってきたわけではなく、長い年月をかけて緻密に設計、構築された設備の集合体です。

こんな大切なものを、パッケージを導入し、合わない所は予算の範囲でカスタマイズだけして、中途半端なシステムが出来上がるという有様だと非常にもったいないということは読み取れるし、その通りだと思う。

経営者はITで会社を動かせ

これは本書のコラムだが、本文以上に役に立つ考え方だ。

経営にとって、ITは経営幹部が会社を思い通りに動かすための仕組みである

ここではテーマとして常連客のフォローについて書いている。

いくら「常連客をフォローしろ」と言った所で、出来る範囲も決まっているし、人は忘れてしまうから、確実に対応できるものでもない。

それに対し、例えば

  • 過去10か月に8回以上。商品を買った方を常連客と見なす
  • 常連客には常に5%引きで販売する
  • 常連客に限って、常に即日で配達できるようにする

というようなロジックを組み込んでしまい、自動的に業務がそれに沿って進むようにすれば、社員が対応するよりずっと簡単にできる。ITを使って業務を変えるというのは、こういうことまで意識しないといけないし、それが自社にとって有用なら作り込むべき。こういうことをせずに新しい箱だけ作っても、「高い金出してシステムを変えても何も変わらない」となってしまう。

IT部門は何をすべきか

本書では4つに分類している。これはITproなどでも「IT部門はしょうがないやつら」と散々言われているが、そんなことを言われ続けないようにしないといけない。

  1. 新事業創出
  2. 業務コンサル
  3. 維持発展
  4. 便利な道具提供

恐らく3と4が多いのだろうし、業務部門もそれを望んでいる事が多いはず。

だから仕方なくそれになってしまう。止まると怒られるし。

ただ、1と2はやはり必要だ。ここの差が決定的な差になるし、これから新規事業をIT無しでやるならともかく、そんな世界はもうあり得ない。IT部門は望まずとも1と2を頑張らなければならない。

IT部門もベンダーの経験もある。3と4が強いのが良く分かる。どうしても現状を変える抵抗が強く、とりあえず高い金額でハードウェアのリプレースなどで寿命を延ばしている。

それが悪いわけではないが、果たして競争力に繋がるのか?というと大きな変化は望めない。無駄に大きく変化をするだけでは失敗するだろうけど、いざという時に動けないといけないなと感じる。現状維持の場合、全ての業務を洗い出し、今の競争力の源泉がここにあり、これ程のノウハウは残すべきだ、と判断してから現状維持にすべきだろう。そこまでしたってこのご時世はいつ変わるかわからないのだから。

システムの営業に行くとどうしても費用対効果について言われる。もちろんその気持ちは分かる。投資するからには回収できないといけないから。

そしてそれがあたかもすぐ効果が出ることを望まれている人が多いと感じる。

今までデータを集めていなかった企業が、素晴らしいダッシュボードが見れるシステムを使っても碌に効果は出ないだろう。だってデータがないし、集める仕組みも作れていなければ分析するデータも集まらない。しかし、1年なり2年なりデータを地道に集め続け、ある時フッと効果がでるものだと考えている。本書にもそのような事が書かれている。

本当に会社の命運を決める、プラント型ITを育てるには、血肉を育てるような、成人病にならない体を作るような、アスリートが己の肉体を鍛えるような、もっと地道な作業です。

経営に関わる人、業務を頑張っている人にも是非ITを考えてもらいたいなと思ったら読ませたらいいと思う。

 


スポンサーリンク